遮熱工事とは?畜舎の暑さ対策に向く施工方法・メリット・断熱との違いを解説

近年の猛暑により、畜舎内の暑さ対策に悩む畜産経営者の方も多いのではないでしょうか。送風機を稼働させても十分に暑さを和らげられず、電気代の負担が増える場合もあります。
畜舎内の暑さの原因のひとつが輻射熱です。遮熱工事は、輻射熱を軽減し、建物内部の温度上昇を抑える対策です。この記事では、遮熱工事の仕組みや断熱工事との違い、適した施工方法や施工箇所、導入時の注意点までわかりやすく解説します。
畜舎の暑さ対策としての遮熱工事とは
遮熱工事とは、太陽光などによる輻射熱を反射し、建物内部への熱の侵入を抑える施工のことです。
夏場の畜舎内の暑さには、屋根や壁が日射によって熱せられることや、高温の外気が流入することなど、複数の要因が関係します。屋根からの輻射熱の影響が大きい場合は、遮熱工事によって日射の影響を抑えることが、暑さ対策のひとつになります。
畜舎はとくに、夏の強い日差しを受け続ける屋根が高温になり、輻射熱によって建物内部の温度が上昇しやすい構造です。遮熱工事によって屋根が受ける熱を反射し、温度上昇を抑えることで、畜舎内に侵入する熱を減らす効果が期待できます。
こうした対策は、夏場の暑さを和らげ、家畜が過ごしやすい環境を整えるうえで役立ちます。
畜舎における遮熱工事と断熱工事の違い
遮熱工事と断熱工事は、どちらも暑さ対策に用いられますが、熱へのアプローチが異なります。
- 遮熱:太陽光などによる輻射熱を反射し、建物内部への熱の侵入を抑える方法
- 断熱:屋根や壁などに断熱材を設け、内外の熱が移動しにくい構造にする方法
畜舎では、夏の強い日差しを受けた屋根から熱が伝わり、室内の温度が上昇することがあります。そのため、屋根からの熱の侵入を抑えることが、暑さ対策の重要なポイントです。遮熱工事は、屋根の表面で輻射熱を反射することで、畜舎内の温度上昇を和らげる効果が期待できます。
畜舎に遮熱工事を行うメリット
畜舎に遮熱工事を行うメリットは、室温の上昇を抑えるだけでなく、家畜の暑熱ストレスや暑さ対策にかかる負担の軽減が期待できることです。ここでは、畜産経営の観点から、遮熱工事によって期待できる3つのメリットを紹介します。
なお、作業者を守るための労働安全衛生法上の熱中症対策と、家畜の暑熱対策は目的が異なるため、ここでは家畜と畜舎環境への影響を中心に解説します。
夏場の畜舎内の温度上昇を抑えられる
遮熱工事は、送風機や換気設備だけでは対処しきれない暑さに対しても、熱の侵入を抑える方法として効果が期待できます。
実際、岡山県の事例では、遮熱塗装によってスレート屋根の表面温度が61.9℃から36.5℃まで低下したと報告されています。屋根の表面温度が下がれば、換気設備だけでは対処しきれず、畜舎の天井付近にこもりがちな熱も軽減できます。
一方、大分県での牛舎の実証調査では、遮熱剤の塗布後1~2週目に牛舎内の最高温度が平均2℃台低下したものの、7~8週目には温度の低下幅が小さくなりました。この事例では、塗布した遮熱剤が次第に流れ落ちたことが、効果の低下につながったと報告されています。
効果の大きさや持続期間は、塗料の種類や下地処理、施工方法などによって異なります。冬場の保温効果も施工方法や建物の条件によって変わるため、こうした違いを踏まえて、自分の畜舎に適した工法を選ぶことが大切です。
出典:熊本県天草家畜保健衛生所「天草家保通信2022年8月号」
出典:大分県中部振興局「夏季における遮熱剤の屋根塗布が牛舎内環境に及ぼす効果の調査」
家畜の暑熱ストレス軽減が期待できる
遮熱工事によって畜舎内の温度上昇を抑えられれば、家畜の暑熱ストレスの軽減が期待できます。
牛や豚、鶏などの家畜は、暑熱ストレスを受けると、採食量の減少や行動の変化などが見られることがあります。こうした影響が続くと、乳量や増体、繁殖成績などに影響する可能性があります。とくに夏場は、家畜の状態を観察しながら、飼育環境を適切に管理することが重要です。
暑さによる負担は気温だけでなく湿度にも左右されます。そのため、家畜の暑熱ストレスを評価する際には、温度と湿度を組み合わせた「温湿度指数(THI)」という指標が用いられます。
ただし、遮熱工事だけですべての問題を解消できるわけではありません。送風や換気、飲水環境の整備なども組み合わせ、家畜の種類や飼育状況に応じて対策を講じることが大切です。
送風機・ミストなどの負担軽減が期待できる
遮熱工事によって屋根からの熱の侵入を抑えられれば、送風機やミストなどの設備にかかる負担を軽減できる可能性があります。
猛暑が続くと、送風機やスプリンクラーなどの稼働時間が長くなり、電気代などのランニングコストが増えることがあります。屋根から侵入する熱を抑えることは、こうした設備の負担を和らげるための対策のひとつです。
畜舎に適した遮熱工事の主な施工方法
畜舎の遮熱工事では、主に「遮熱塗装」と「遮熱シート」が用いられます。このほか、二重屋根の設置や屋根への散水なども、熱の侵入を抑えるための選択肢です。
適した施工方法は、新設か既存か、屋根材の種類や劣化状況、建物の構造などによって異なります。それぞれの特徴を把握したうえで、自分の畜舎に合う方法を選びましょう。
ここでは、遮熱塗装と遮熱シートを取り上げ、それぞれの特徴を解説します。
畜舎への遮熱塗装
遮熱塗装は、屋根の表面に太陽光を反射する塗料を塗り、屋根の温度上昇を抑える方法です。既存の屋根を活用できるため、屋根の形状によっては施工しやすく、錆止めや防水などの補修とあわせて実施できる点もメリットです。
遮熱塗料には、シリコン系やフッ素系などの種類があり、製品によって耐久性や価格が異なります。効果を維持するには、適切な下地処理を行うとともに、塗料の耐用年数や屋根の状態に応じて塗り直しを検討する必要があります。
なお、費用や耐久性は建物の条件や使用する塗料によって変わるため、個別の施工事例をそのまま一般化することはできません。また、遮熱塗料は主に輻射熱を反射するものであり、熱の伝わりにくさを重視した断熱塗料とは働きが異なります。製品を選ぶ際は、期待する効果や用途を確認しましょう。
畜舎への遮熱シート
遮熱シートは、アルミなどを用いたシートを屋根に施工し、輻射熱を反射する方法です。
屋根の老朽化が進んでいる場合は、シートを施工する前に下地の補強やカバー工法などが必要になり、初期費用が増える可能性もあります。屋根の状態や構造、屋根材によって適した工法は変わるため、現地調査を踏まえて判断する必要があります。
なお、屋根への散水も暑さ対策の選択肢ですが、単独では効果が出にくいため、屋根の熱を遮る手段と組み合わせるとよいでしょう。ただし、水の使用量の増加や排水設備の維持管理などの課題もあります。
畜舎で遮熱工事を施すのに適した箇所

畜舎の遮熱工事は、施工する箇所によって期待できる効果が異なります。とくに、日射の影響を受けやすい屋根は優先的に検討したい箇所です。また、屋外に設置された飼料タンクも、温度上昇への対策が求められる設備のひとつです。
ここでは、屋根と飼料タンクを中心に、屋根裏や側面などで検討できる対策も紹介します。
屋根上
屋根は直射日光を受けて高温になりやすく、畜舎内の温度環境に影響する箇所です。屋根からの熱の影響が大きい畜舎では、屋根の遮熱工事が暑熱対策の有力な選択肢になります。
畜舎の屋根材には、スレートや畜産波板、ガルバリウム鋼板、折板などがあり、材質や形状などによって適した施工方法や費用が異なります。老朽化している場合は下地補修も必要になります。
飼料タンクなどの付帯設備
屋外に設置された飼料タンクも、遮熱対策を検討したい箇所です。
金属製のタンクは直射日光を受けて高温になりやすく、内部の温度上昇が飼料の品質に影響するおそれがあります。また、温度差によって結露が発生すると、カビなどの原因になることも考えられます。
湧蒼塗装研究所では、畜舎の屋根だけでなく、飼料タンクの遮熱にも対応しています。タンク内部の温度上昇を抑えることで、飼料の保管環境を整える効果が期待できるでしょう。
畜舎の屋根裏・側面などそのほかの箇所
屋根や飼料タンクに加え、屋根裏や側面なども、畜舎の構造に応じて暑さ対策を検討できる箇所です。
屋根裏では、断熱材の追加や二重屋根の設置、遮熱シートの施工などが選択肢になります。屋根裏に熱がこもる場合は、通気孔やファンによる排熱も含めて検討するとよいでしょう。
側面の壁や窓、入口では、ひさしや寒冷紗(かんれいしゃ)などを用いて直射日光を遮る方法があります。畜舎は換気のために側面を開放する構造も多いため、通気性を確保しながら日差しを遮る工夫が必要です。
畜舎で遮熱工事を行う際の注意点
畜舎の遮熱工事を検討する際は、遮熱だけですべての暑さを解消できるわけではないことを理解しておく必要があります。効果は建物の構造や施工品質などによっても変わるため、ほかの暑熱対策と組み合わせて実施することが大切です。
施工後のトラブルを防ぐためにも、畜舎の構造や換気方法を理解した専門業者に相談し、施工条件を事前に確認しておきましょう。
対流熱や伝導熱には効果がない
遮熱工事は主に輻射熱への対策であり、対流熱や伝導熱による熱の移動を十分に抑えられるわけではありません。
対流熱:夏場に高温の外気が換気口や開口部から畜舎内に入り、室内の空気が暖められることです。
伝導熱:外気や日射によって高温になった屋根や壁の材料を通じて、畜舎内側へ熱が伝わることです。
遮熱によって日射による熱の侵入を抑えられても、高温の外気が畜舎内に入ることや、屋根・壁の材料を通じて熱が伝わることによる暑さは残る可能性があります。そのため、畜舎内の暑熱対策では、遮熱工事だけでなく、送風、日よけ、飼育密度の緩和など、ほかの対策と組み合わせることが大切です。
正しく施工しないと畜舎内で結露が発生する
遮熱工事を行う際は、結露が発生しないよう、畜舎の換気や通気の仕組みに配慮することも重要です。
畜舎では、屋根裏の通気が不十分な場合や、室内外の温度差が大きい場合などは、結露が発生することがあります。遮熱シートを施工する際は、製品の仕様や施工方法を確認し、既存の換気・通気経路を妨げないようにすることが重要です。
施工を検討する際は、畜舎の換気経路や屋根裏の通気を確保できるか、事前に業者に確認しましょう。
まとめ
畜舎の暑さ対策では、屋根や飼料タンクへの遮熱工事が選択肢の一つになります。屋根からの熱の影響を抑えることで、畜舎内の温度上昇を軽減し、家畜の暑熱ストレスを抑える効果が期待できます。
ただし、施工による効果は、屋根材や建物の構造、施工方法などによって異なります。遮熱塗装や遮熱シートの特徴を比較し、換気や送風などの対策も組み合わせながら、畜舎に適した方法を選びましょう。a
湧蒼塗装研究所では、畜舎の屋根や飼料タンクの遮熱工事に対応しています。畜舎内の暑さや飼料タンクの温度上昇などでお悩みの方は、ぜひご相談ください。お見積もりは無料です。
遮熱塗装の施工事例はこちらでご覧いただけます。「猛暑による生産性の低下を防ぎたい」「コストを抑えて暑熱対策を行いたい」という方も、ぜひご覧ください。