濃厚飼料とは?役割や原料、粗飼料との違いを解説

飼料価格の高騰が続くなか、濃厚飼料の給与方法やコストの見直しを検討する畜産経営者が増えています。濃厚飼料は家畜の成長や生産を支える重要な飼料です。粗飼料との違いや家畜ごとの役割を理解することで、日々の給与設計や経営判断に役立てられます。
この記事では、濃厚飼料の定義や主な原料から、牛・豚・鶏ごとの濃厚飼料の役割、粗飼料との違い、夏場の保管管理、コスト対策、供給課題までわかりやすく解説します。
濃厚飼料とは
濃厚飼料とは、デンプンなどの炭水化物やタンパク質を多く含み、繊維質が少ない飼料のことです。消化吸収されやすく、比較的少ない量でエネルギーやタンパク質を補給できる点が特徴といえます。可消化養分総量を示すTDN(Total Digestible Nutrients)が高いものが多く、家畜の成長や乳・肉・卵の生産を支える栄養源となります。
牧草やワラなどの粗飼料だけでは、生産性の高い家畜に必要な養分を十分に補えない場合があります。そこで、不足するエネルギーやタンパク質を補うのが濃厚飼料です。粗飼料を土台とし、濃厚飼料で生産に必要な栄養を補うと考えると、両者の役割を理解しやすいでしょう。
濃厚飼料の主な原料
濃厚飼料の主な原料は、栄養成分や用途に応じて、大きく次の4つに分けられます。
- 穀類:トウモロコシ、大麦、小麦など。エネルギー源となる炭水化物を多く含みます。
- 油かす類:大豆油かす、菜種油かすなど。タンパク質の供給源として利用されます。
- ぬか類・製造副産物:ふすま、米ぬか、ビートパルプなど。原料によって栄養成分が異なり、飼料の種類や配合に応じて利用されます。
- 動物質飼料・油脂類:魚粉などの動物質飼料や、動植物由来の油脂類が該当します。動物質飼料はタンパク質などを補給するために、油脂類はエネルギーを補うために利用されます。
なお、濃厚飼料は栄養成分や繊維質の含有量などによる飼料の区分であり、トウモロコシ単体のような単味飼料と、複数の原料を調製した配合飼料の両方が含まれます。濃厚飼料と配合飼料は同じ意味ではないため、区別しておきましょう。
牛・豚・鶏それぞれに与えられる濃厚飼料の役割
濃厚飼料の役割や給与方法は、家畜の種類や飼育目的によって異なります。ここでは、牛・豚・鶏それぞれにおける濃厚飼料の役割を見ていきましょう。
牛の飼料
牛の飼料では、粗飼料を基本としながら、濃厚飼料で不足する養分を補うことが一般的です。生産性を高めるためには多くの養分が必要となり、粗飼料だけではエネルギーが不足することがあるためです。
濃厚飼料は、炭水化物やタンパク質を補い、筋肉の成長や乳の生産を支えます。牛には4つの胃があり、そのうち最も大きい第1胃(ルーメン)では、微生物が飼料を発酵・分解します。この働きを維持するには粗飼料に含まれる繊維質も欠かせないため、濃厚飼料とのバランスが重要です。
乳牛には、泌乳量を維持し、乳の生産に必要なエネルギーを補うために濃厚飼料が給与されます。肥育牛では、肥育の進み具合に応じて圧ぺんしたトウモロコシなどを取り入れ、増体やサシ(筋肉内の脂肪)の形成を促します。
ただし、適切な給与量は飼育目的や発育段階、粗飼料の品質などによって異なります。濃厚飼料に偏らないよう、飼料全体の栄養バランスを考慮することが大切です。
豚の飼料
豚の飼料は、トウモロコシなどの穀類を主体とした濃厚飼料(配合飼料)が中心です。
豚は単胃動物であり、牛のようにルーメン内の微生物の働きによって繊維質を効率よく利用することはできません。そのため、エネルギーやタンパク質などをバランスよく含む配合飼料が広く使われています。
豚の飼育では、発育ステージに応じて飼料の栄養バランスを調整することが重要です。子豚用、肥育豚用など、成長段階ごとに必要な養分は異なります。適切な飼料を給与することで、健康的な発育と効率的な増体を目指せます。
鶏の飼料
鶏の飼料も、濃厚飼料を主体とした配合飼料が中心です。
鶏は単胃動物であり、トウモロコシなどの穀類をエネルギー源として利用しますが、飼育目的に応じて必要な栄養素を調整することが、安定した生産につながります。
採卵鶏では、卵殻の形成に必要なカルシウムや、卵の生産を支えるタンパク質などの補給が重視されます。一方、ブロイラー(肉用鶏)では、筋肉の成長を促し、効率よく体重を増やすための栄養設計が必要です。
濃厚飼料と粗飼料の違い

濃厚飼料と粗飼料は、含まれる栄養成分や家畜の体内での役割が異なります。濃厚飼料はエネルギーやタンパク質の補給に、粗飼料は繊維質の供給や、特に反すう動物の消化機能の維持に役立ちます。主な違いは次のとおりです。
| 飼料 | 栄養成分 | 繊維質 | 主な目的 |
| 濃厚飼料 | 炭水化物やタンパク質を多く含むものが中心 | 比較的少ない | 増体・産乳・産卵に必要な養分の補給 |
| 粗飼料 | 繊維質を多く含み、種類によって栄養価が異なる | 多く含む | 繊維質の供給や消化機能の維持。牛などの消化機能を維持する土台となる |
このように、濃厚飼料と粗飼料はそれぞれ異なる役割を持っています。適切な割合は家畜の種類や飼育目的によって異なるため、家畜の健康と生産性を考えるうえでは、必要な養分に応じて組み合わせることが重要です。
粗飼料とは
粗飼料とは、牧草やワラ類など、繊維質を多く含む飼料のことです。牛などの反すう動物にとっては、反すうや唾液の分泌を促し、ルーメンの機能を維持するために欠かせない飼料です。
粗飼料に含まれる繊維質は、ルーメンの運動や微生物による発酵を支えます。また、反すうによって分泌される唾液は、ルーメン内の酸性度を調整する働きも担います。エネルギーやタンパク質などを効率よく補う濃厚飼料とは、主な役割が異なるといえるでしょう。
粗飼料には、生草・乾草・サイレージなどの種類があります。それぞれ水分量や保存性、利用方法が異なるため、特徴を確認しておきましょう。
生草
生草は、刈り取ったばかりの青い牧草です。水分を多く含み、家畜の嗜好性が高いものもある一方、水分が多いぶん傷みやすく、長期保存には向いていません。栄養価は草種や生育段階、収穫時期などによって異なるため、状態を確認しながら利用することが大切です。
乾草
乾草は、牧草などを乾燥させて水分を減らした飼料です。水分量を12~20%まで減らしたものが目安とされ、適切に乾燥・保管することで保存性を高めやすく、年間を通じた給与にも利用できます。代表的な種類にチモシーやアルファルファなどがあります。
サイレージ
サイレージは、牧草やトウモロコシ、飼料イネ(WCS)などを密閉し、主に乳酸発酵によって保存性を高めた飼料です。発酵による独特の酸味があり、適切に調製・保管することで、品質の低下を抑えながら保存できます。青草が不足しやすい時期にも活用できるため、安定した飼料確保に役立ちます。
役割から見る濃厚飼料と粗飼料の違い
濃厚飼料と粗飼料は、どちらか一方を優先すればよいものではなく、それぞれの役割を踏まえて組み合わせることが大切です。
粗飼料は、とくに反すう動物の消化機能を維持する土台となり、濃厚飼料は増体や産乳、産卵に必要なエネルギーやタンパク質などを補います。両者を適切に組み合わせることで、家畜の健康と生産性の両立を目指せます。
一方、濃厚飼料の給与量が多すぎると、牛ではルーメンアシドーシスなどの消化器系のトラブルにつながるおそれがあります。生産性や飼料費だけでなく、家畜の健康にも配慮し、粗飼料の品質や給与量を含めて飼料全体のバランスを調整することが重要です。
濃厚飼料は夏場の高温多湿環境に注意が必要
濃厚飼料の品質を保つには、夏場の高温多湿な環境に注意が必要です。屋外に設置された鋼製の飼料タンク(サイロ)は、直射日光によって高温になることがあり、タンク内に結露が生じると、飼料が固まったりカビが発生したりするおそれがあります。
カビが発生した飼料には、カビ毒(マイコトキシン)が含まれる可能性があり、家畜の健康や生産性に悪影響を及ぼすことも考えられます。そのため、定期的な清掃や在庫管理に加え、換気や防湿にも配慮しましょう。
また、飼料タンクや畜舎の外壁に遮熱・断熱塗装を施すことも、暑さ対策のひとつです。太陽熱による温度上昇を抑える効果が期待できますが、結露や飼料の劣化を防ぐには、設備の構造や設置環境に応じた対策も必要です。
湧蒼塗装研究所では、飼料タンクや畜舎に向けた遮熱・断熱塗装をご提案しています。飼料タンクに遮熱・断熱塗装を施すことで、外気温の影響によるタンク内の温度上昇を抑え、飼料の品質維持をサポートします。
出典:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構「飼料タンク内の温湿度に及ぼす飼料タンク用換気装置の影響」
濃厚飼料の安定供給は畜産業における大きな課題
濃厚飼料の安定供給は、畜産経営を継続するうえで重要な課題です。日本では飼料の多くを輸入に依存しており、純国内産飼料自給率は24%、濃厚飼料に限ると自給率は11%にとどまります(令和7年度概算値)。
このように輸入への依存度が高いと、国際情勢や為替相場の変動が飼料の調達コストに影響しやすくなります。飼料価格の動向を把握するとともに、安定して調達できる体制を検討することも、畜産経営において重要な視点です。
出典:農林水産省「飼料をめぐる情勢(データ版)令和8年9月」
濃厚飼料を輸入に依存することのリスク
濃厚飼料は、原料となるトウモロコシなどを海外からの輸入に頼る割合が高く、国際相場や為替、輸送費などの変動が仕入れコストに影響します。たとえば、ロシアによるウクライナ侵攻は、世界の穀物需給を変動させ、飼料価格の高騰につながった要因のひとつです。
このように、海外情勢による価格変動は、飼料費の増加を通じて畜産経営を圧迫するおそれがあります。リスクに備えるため、日頃から価格動向を確認し、調達先や飼料の構成を検討しておきましょう。
出典:農林水産省「飼料をめぐる情勢(データ版)令和8年9月」
出典:農林水産省農林水産政策研究所「ロシアのウクライナ侵攻と世界の穀物需給」
濃厚飼料の自給率を高めるための取り組み
濃厚飼料の輸入依存を抑えるため、国内では国産原料や食品製造副産物などを活用する取り組みが進められています。代表的な例は次のとおりです。
- 飼料用米の活用:水田を活用して生産した米を飼料として利用する取り組み
- エコフィード:食品の製造過程などで発生する食品残さを、適切に処理して飼料に再利用する取り組み
- 子実用トウモロコシの国産化:濃厚飼料の主な原料となるトウモロコシの子実を国内で生産する取り組み
国産飼料や食品残さを活用することは、輸入飼料への依存を抑え、供給の安定化につながる可能性があります。原料や調達条件によっては購入飼料費の抑制も期待できるため、地域で利用できる飼料資源や関連施策を確認してみるとよいでしょう。
まとめ
濃厚飼料は、炭水化物やタンパク質を多く含み、家畜の成長や生産を支える重要な飼料です。繊維質を多く含む粗飼料とは役割が異なるため、家畜の種類や飼育目的に応じて組み合わせる必要があります。牛・豚・鶏それぞれの消化の仕組みや発育段階を踏まえ、適切な給与方法を検討しましょう。
また、飼料価格の高騰や輸入依存のリスクに備えるには、無駄のない給与に加え、保管環境の管理も重要です。特に夏場は、飼料タンク内の温度や湿度に注意し、カビや品質劣化を防ぎましょう。
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