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飼料自給率とは?現状や課題・向上のための取り組みを解説

国内の畜産業において、飼料自給率は経営の安定性を見極めるうえで重要な指標です。現在は輸入飼料への依存度が高く、国際情勢や為替の変動によって飼料価格が大きく動きやすいため、畜産経営が影響を受けるおそれがあります。

このコラムでは、飼料自給率の定義や計算方法、日本の現状と課題を整理しながら、自給率を高めるための具体的な取り組みと、そのメリットについて解説します。

飼料自給率とは

飼料自給率とは、家畜に与える飼料のうち、国内で生産された飼料がどれくらいの割合を占めているかを示す指標です。畜産経営では、飼料費が経営コストの3~5割ほどを占めるため、経営の安定性や収益性を判断するうえで重要な目安になります。

飼料自給率は、次の計算式で求められます。

飼料自給率(%)=純国内産飼料供給量(TDN万トン)÷飼料需要量(TDN万トン)×100

ここで使われる「TDN」は「可消化養分総量」のことです。家畜が実際に消化できる養分のエネルギー量を表す単位で、飼料の栄養価を同じ基準で比べるために用いられます。

なお、飼料自給率は「粗飼料自給率」と「濃厚飼料自給率」に分けて算出されます。

粗飼料と濃厚飼料の違い

飼料は「粗飼料」と「濃厚飼料」の2種類に分けられます。

粗飼料は、牧草や稲わらなどを使った、繊維質の多い飼料です。牛のような反すう動物に与えられ、胃や腸の働きを保つうえで欠かせません。乾草、サイレージ、稲わらなどがこれにあたります。

なお、サイレージとは、牧草や青刈りとうもろこし、稲発酵粗飼料などを発酵させて保存した飼料です。粗飼料は国内でも生産しやすく、自給率は比較的高い傾向があります。

一方、濃厚飼料は、とうもろこしや大豆油かす、ふすまなどの穀物や加工副産物を使った飼料です。エネルギーやタンパク質を多く含み、豚や鶏、肥育中の肉用牛に使われます。

とうもろこしや飼料用米のほか、パンくずや豆腐粕などを活かしたエコフィードも含まれます。濃厚飼料は国内生産が限られており、大部分を輸入に頼っているのが現状です。

出典:農林水産省「飼料をめぐる情勢(令和8年3月)」
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-1513.pdf

【2026年】日本の飼料自給率の現状

農林水産省が令和8年3月に公表した資料によると、令和6年度概算における日本の飼料自給率は、全体で26%です。内訳を見ると、粗飼料自給率は80%、濃厚飼料自給率は13%となっています。

粗飼料は、国内の草地や水田を活かして生産しやすいため、比較的高い水準を保っています。一方、濃厚飼料は穀物が中心で、国土条件や気候の面から国内での生産が難しく、大部分を輸入に頼っている状況です。

また、飼料自給率の推移を見ると、2000年度以降は25~27%程度でほぼ横ばいの状態が続いています。こうしたなかで、農林水産省は令和12年度、2030年度までに、飼料自給率を34%へ引き上げる目標を掲げています。

出典:農林水産省「飼料をめぐる情勢(令和8年3月)」
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-1513.pdf

配合飼料価格の推移

配合飼料価格は、ウクライナ情勢や為替の変動、原油価格の高騰などの影響を受け、近年大きく動いています。

2020年以降は、ロシアによるウクライナ侵攻にともなう穀物流通量の減少に加え、中国などでの穀物需要の増加や輸出規制など、世界的な変化が相次ぎました。

そこに深刻な円安も重なり、配合飼料価格は急激に上昇しました。2022年から2023年にかけては過去最高水準まで高騰し、畜産経営を大きく圧迫しました。

その後は下落傾向が見られるものの、価格は依然として高い水準にあります。輸入飼料への依存度が高い現状では、国際的な穀物市況や為替レートの変動によって、畜産経営者のコスト負担が左右される構造が続いています。

出典:農林水産省「飼料をめぐる情勢(令和8年3月)」
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-1513.pdf

出典:農林水産省「ロシアのウクライナ侵攻と世界の穀物需給」
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/review/attach/pdf/221130_pr110_03.pdf

飼料の安定供給のためには自給率向上が必須!

輸入飼料に過度に頼ることは、畜産経営にさまざまなリスクをもたらします。配合飼料価格の変動で経営が不安定になるだけでなく、国際情勢が急変した場合には、飼料そのものを確保しにくくなるおそれもあります。

実際に、2022年のウクライナ情勢では穀物の供給不安が現実となり、多くの畜産経営者が飼料価格の高騰による経営圧迫に直面しました。

こうした経験を踏まえると、輸入飼料に依存した経営から見直しを進め、国産飼料を基盤とした畜産経営へ移行していくことが重要といえます。

飼料自給率の向上は、畜産経営の持続可能性を高めるうえで欠かせません。安定した畜産物の供給体制を築くための土台にもなります。

出典:農林水産省「飼料生産・利用の現状と飼料政策について」
https://agri.mynavi.jp/wp-content/uploads/2025/01/02nosuisyo_ueki.pdf)

こちらの記事では、飼料自給率をはじめ、環境問題や人手不足といった畜産業の課題や取り組みについて解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

農業者・畜産経営者が飼料自給率アップに取り組むメリット

飼料自給率の向上に取り組むことで、農業者や畜産経営者にはさまざまなメリットがあります。主なメリットとして、以下3つがあげられます。

メリット1.飼料コスト削減につながる
国産飼料は、輸入飼料に比べて国際相場や為替の変動に左右されにくく、コストを見通しやすい点が特長です。そのため、経営の安定化にもつながります。

メリット2.飼料販売による新たな収益源確保がしやすい
耕種農家にとって、飼料作物の生産は新たな事業の広がりにつながります。畜産農家との契約栽培によって販路を安定させやすく、水田活用の直接支払交付金などを活用できる点もメリットです。

メリット3.国産飼料使用という付加価値が生まれる
国産飼料で育てた畜産物として打ち出すことで、消費者の理解を得やすくなり、価格への反映や販路の拡大にもつながります。

飼料自給率を上げるための取り組み

飼料自給率を高めるため、国や地方自治体、農業団体などではさまざまな取り組みが進められています。ここでは、主な取り組みを紹介します。

飼料用作物の生産

飼料自給率の向上に向けては、飼料用作物の生産拡大が中心となる取り組みです。とくに、水田を活用して生産しやすい稲発酵粗飼料、稲発酵粗飼料(稲WCS)、飼料用米、青刈りとうもろこしの導入が重点的に進められています。

稲発酵粗飼料(稲WCS)

稲発酵粗飼料(稲WCS:Whole Crop Silage)とは、稲の穂と茎葉をまとめて収穫し、乳酸発酵させてつくる粗飼料です。水田で生産できるため、耕種農家にとっては水田活用の有力な選択肢となり、畜産農家にとっては良質な国産粗飼料を確保する手段になります。

稲WCSは連作障害が起こりにくく、粗飼料として一定の栄養価を持ち、牛の嗜好性が高い点も特長です。水田活用の直接支払交付金に加え、収穫機械の導入に対する支援もあります。

飼料用米

飼料用米は、とうもろこしと同程度の栄養価を持ち、水田で生産できる濃厚飼料として注目されています。耕種農家にとっては、休耕田や転作田を活用した新たな収益源となり、畜産農家にとっては国産の濃厚飼料を確保する手段になります。

また、飼料用米の生産には、水田活用の直接支払交付金が適用されるほか、カントリーエレベーターなどの保管施設の整備に対する支援も行われています。

青刈りとうもろこし

青刈りとうもろこしは、飼料用とうもろこし、デントコーンを完熟前に収穫し、茎、葉、実をまとめてサイレージ化した粗飼料です。粗飼料でありながら栄養価が高く、濃厚飼料の使用量を抑えることにもつながるため、酪農経営ではとくに重要な飼料とされています。

令和5年産の作付面積は約9.7万haで、増加傾向が続いています。

出典:農林水産省「飼料をめぐる情勢(令和8年3月)」(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-1513.pdf

国産濃厚飼料の生産

濃厚飼料の自給率は13%と低く、国産の濃厚飼料を増やしていくことが重要な課題となっています。そのため、イアコーンサイレージや子実用とうもろこしといった、新たな国産濃厚飼料の生産と利用の拡大に向けて、専用収穫機の導入支援や技術指導が進められています。

また、エコフィード、食品残さ利用飼料の生産と利用の拡大も進められています。パンくずや豆腐粕などの食品副産物を飼料として活かすことで、濃厚飼料の自給率向上と食品ロスの削減を両立しやすくなります。

出典:農林水産省「飼料をめぐる情勢(令和8年3月)」(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-1513.pdf

コントラクターの普及

コントラクターとは、飼料作物の播種や収穫などを請け負う外部支援組織のことです。令和5年時点で全国に852組織あり、増加傾向が続いています。

コントラクターは、農地の利用集積や高性能機械の活用によって、飼料生産作業の効率化や飼料作物の単収向上に貢献しています。畜産農家にとっては、飼料生産にかかる労力やコストを抑えられるため、規模拡大や省力化を進めるうえで有効な手段といえます。

国産稲わらの利用拡大

稲わらは、国内で発生する量のうち約1割にあたる約70万トンが飼料として活用されています。一方で、約20万トンは中国からの輸入に頼っているのが現状です。

このため、国産稲わらの利用拡大に向けて、収集に必要な機械の導入や保管施設の整備、需給者をつなぐマッチング支援の強化が進められています。

草地等の生産性向上

近年は、規模拡大などの影響で草地管理に十分な時間をかけにくくなり、草地改良率の低下や防除が難しい雑草の繁茂が課題となっています。

こうした状況に対応するため「飼料自給率向上緊急対策事業」では、草地の診断や、生産性の高い草地などへの改良に取り組む支援が行われています。

放牧による飼育の推進

放牧は、自分の農場で育てた牧草を家畜に直接食べさせる方法で、飼料自給率の向上に大きくつながります。また、飼料の生産や給与、家畜排せつ物の処理にかかる手間を抑えやすく、酪農や畜産経営のコスト低減を進めるうえでも有効な方法です。

耕畜連携の推進

耕畜連携とは、耕種農家と畜産農家が連携し、地域の中で飼料生産と堆肥利用を循環させる取り組みです。耕種農家が畜産農家に必要な飼料作物を生産し、畜産農家から出る堆肥を耕種農家が活用することで、輸入飼料への依存を減らし、環境負荷の軽減にもつながります。

TMRセンターの普及

TMRセンターとは、粗飼料と濃厚飼料を組み合わせた牛用飼料であるTMR(Total Mixed Ration)を製造し、農家に供給する施設です。令和5年時点で全国に164組織あり、2013年から2023年の10年間で約1.5倍に増えています。

TMRセンターは、良質で品質が安定したTMRを通年で供給できるため、畜産農家の飼料調製にかかる労力の軽減に役立ちます。あわせて、乳牛の泌乳量の向上にもつながっています。

出典:農林水産省「飼料をめぐる情勢(令和8年3月)」(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-1513.pdf

まとめ

飼料自給率とは、国内で生産された飼料がどれだけ使われているかを示す指標です。日本の飼料自給率は26%(令和6年度概算)と低く、輸入に頼る構造が配合飼料価格の変動を招き、畜産経営の負担になっています。

自給率向上に向けては、稲WCSや飼料用米、青刈りとうもろこしなどの飼料用作物の生産拡大に加え、コントラクターやTMRセンターの普及、耕畜連携の推進などが進められています。

これらの取り組みは、飼料コストの削減や経営の安定化、国産飼料を活かした付加価値の向上につながります。また、飼料保管施設の維持管理も経営には欠かせません。

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