畜舎でできる暑熱対策10選!家畜や作業員を猛暑から守る方法と補助金情報

近年、記録的な猛暑が続き、畜産経営に深刻な影響を及ぼしています。暑さで家畜の食欲が低下すると、乳量や増体率が下がり、死亡リスクの上昇にもつながります。こうした変化は、経営上の損失にも直結します。
また、2025年6月の法改正により、作業員への熱中症対策も義務化されており、畜舎環境の整備はこれまで以上に重要な課題となっています。
本記事では、畜舎で実践しやすい具体的な暑熱対策10選と、導入時に活用できる補助金情報をご紹介します。
目次
畜舎に暑熱対策が必要な理由
畜舎の暑熱対策は、経営にも大きくかかわる重要な課題です。家畜の健康と生産性、作業員の安全、そして建物の構造という3つの観点から解説します。
暑熱ストレスによって家畜の品質や生産量が悪化するから
牛や豚、鶏などの家畜は、人間以上に暑さに弱い特性があります。とくに牛は、ルーメンと呼ばれる第一胃で発酵が行われるため、体内で熱が発生しやすく、暑熱ストレスを受けやすい動物です。
乳牛が快適に過ごせる温度は、約4〜20℃とされています。気温が20℃を超えると、呼吸数や体温が徐々に上昇し始めます。暑熱ストレスを受けた家畜は、体温を下げようとして飼料の摂取量を減らすため、乳量や増体率の低下などにつながります。
乳牛では、1日あたり1.5〜2.0kgの乳量低下が報告されています。経産牛40頭を飼育している場合、夏場だけで年間100〜200万円の経済的損失につながる計算です。肉牛では増体率が低下し、出荷までの期間が延びます。
さらに、暑熱ストレスは繁殖機能にも深刻な影響を及ぼします。受胎率の低下や発情の微弱化が起こり、繁殖サイクルが乱れることで、長期的な生産計画にも支障をきたします。
出典:阪谷美樹/九州沖縄農業研究センター「暑熱ストレスが産業動物の生産性に与える影響」
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlac/5/Supple/5_238/_pdf)
出典:公益財団法人 畜産技術協会「やさしい畜産技術の話」
(https://jlta.jp/test/wp-content/uploads/2023/09/yasashii.pdf#page=44)
作業員の健康リスクが高くなるから
畜舎での作業は、炎天下の屋外や高温多湿な室内で行うことが多く、体への負担が大きくなりやすい環境です。農業分野では、作業中に熱中症になった、あるいは身近な人が熱中症になったという人が全体の6割にのぼるというデータもあります。
2025年6月に施行された改正労働安全衛生規則では、熱中症対策が企業の義務となりました。適切な対策を講じなければ法令違反となり、従業員の健康を守れない企業として信頼を損なうおそれがあります。
快適な作業環境を整えることは、人材の定着率向上や求職者への訴求にもつながり、人手不足の解消にも役立ちます。なお、5月でも気温が25℃を超える日があり、体が暑さに慣れていない時期はとくに注意が必要です。
出典:一般社団法人 日本気象協会「農作業と熱中症に関する実態調査を公開」
(https://www.netsuzero.jp/news/20250609-14547.html)
出典:一般社団法人 日本気象協会「熱中症について学ぼう:暑熱順化」
(https://www.netsuzero.jp/learning/le15)
折板屋根によって畜舎内が暑くなりやすい構造だから
多くの畜舎では、コストや施工のしやすさから、折板屋根が採用されています。折板屋根とは、金属板を折り曲げて加工した、凹凸のある屋根のことです。
金属製で薄いため断熱性が低く、直射日光の熱を室内へ伝えやすい特徴があります。屋根の表面温度が60℃を超えると、その熱は放射熱となって畜舎内に広がり、室温以上に体感温度を押し上げます。
換気扇を回していても、屋根からの放射熱によって、畜舎内がサウナのような状態になることがあります。そのため、屋根に遮熱塗料を塗ったり遮熱シートを施工したりすることで、屋根内側の温度を10〜30℃ほど下げることができます。
畜舎でできる暑熱対策10選

暑熱対策は、屋根、側面、畜舎内、飼養管理の4つの観点から考えることが大切です。畜舎の構造や予算に合わせて組み合わせることで、より高い効果が見込めます。
屋根への対策
直射日光を受ける屋根の温度上昇を抑えることで、畜舎内へ入り込む熱を根本から抑えられます。
断熱塗料やドロマイト石灰を塗布する
屋根に遮熱性や断熱性のある塗料を塗ることで、太陽光を反射し、屋根表面の温度上昇を抑えられます。
ドロマイト石灰は、炭酸マグネシウムを含む鉱物を加工した白色の石灰です。動力噴霧器で屋根に吹き付けると、太陽光を反射し、屋根内側の温度を約5℃下げる効果が期待できます。費用を抑えやすいため、予算をできるだけかけずに対策したい場合に向いています。
ただし、ドロマイト石灰は雨で流れやすく、1シーズンごとに塗り直しが必要です。
一方、ワコーエコシールドやクールサームなどの専門的な遮熱塗料、断熱塗料は耐久性に優れており、屋根表面温度を約30℃下げる効果が期待できます。初期費用はドロマイト石灰より高くなりますが、10年ほどメンテナンスが不要なため、長い目で見るとコストパフォーマンスに優れています。
塗装によって屋根内側の放射熱が大きく抑えられるため、換気扇の稼働を減らしやすくなり、電気代の節約にもつながります。
遮熱シートや反射資材・断熱資材を施工する
屋根裏にアルミ箔を使った遮熱シートを施工すると、放射熱を最大97%カットできます。代表的な製品には、サーモバリアやシャネリアなどがあります。
遮熱シートは、太陽から届く赤外線を反射する仕組みです。屋根と天井の間に空気層を設けて施工すると、断熱効果も高まりやすくなります。施工後は、屋根内側の温度が15〜17℃ほど下がり、畜舎内の体感温度も大きく改善されます。
また、発泡スチロールなどの断熱材を、屋根裏に30〜50cmほどの空間を設けて設置する方法もあります。この場合は、空間にたまった高温の空気を逃がすため、通気孔やファンを取り付けることが重要です。
遮熱シートは、夏の暑さ対策だけでなく、冬の保温にも役立ちます。そのため、年間を通して畜舎環境の改善に貢献します。
屋上に散水する
屋根に水を散布し、気化熱によって屋根表面の温度を下げる方法です。水が蒸発するときに熱を奪うため、屋根温度の上昇を抑えられます。
ただし、散水には注意点もあります。湿度が上がりすぎると、かえって家畜の暑熱ストレスを強めるおそれがあるため、湿度管理が欠かせません。また、水道代がかさむことや、雨どいがない屋根では水の流れに偏りが出やすいことも考慮する必要があります。
散水は比較的始めやすい対策ですが、長期的に見ると、遮熱塗料や遮熱シートの施工を検討したほうが、コストパフォーマンスに優れています。
側面への対策
直射日光を遮り、適切に換気を行うことで、畜舎内の温度と湿度を調整します。
換気を十分に行う
畜舎内の熱気を外へ逃がし、新鮮な空気を取り入れることは、暑熱対策の基本です。暑熱期には、畜舎内の空気を1時間あたり45〜60回入れ替える換気量が必要とされています。
自然換気は、窓や開口部を設けて風の流れを活かす方法です。コストを抑えやすい一方で、風向きや天候に左右されます。強制換気は、換気扇や大型ファンで機械的に空気を循環させる方法で、安定した換気量を確保できます。
空気の入口と出口は、バランスよく配置することが重要です。また、換気扇は定期的に清掃し、ホコリやクモの巣を取り除くことで、風量を維持できます。
畜舎に直射日光が入らないようにする
畜舎内に直射日光が入ると、床や壁、飼料の温度が上がり、家畜の体感温度も高まります。また、飼料の変敗(腐敗)や、家畜が横になる時間の減少にもつながります。
直射日光を遮る方法としては、ひさしの延長、遮光ネット、寒冷紗の設置が効果的です。とくに、ベッドエリアや飼槽に日光が当たらないようにすることで、家畜のストレスを軽減できます。
グリーンカーテンとして、つる性植物を育てる方法も手軽な対策として有効です。ゴーヤやアサガオなどを植えることで、日除けになるだけでなく、見た目にも涼しさを演出できます。
畜舎内への対策
屋根や側面から入り込む熱を抑えたうえで、畜舎内でも直接冷却を行うことで、暑熱対策の効果をさらに高められます。
送風機を設置する
家畜に風を当てることは、暑熱対策の基本です。送風機を設置し、風速約2m/sの風が牛の体に直接当たるようにすることで、体感温度を8〜10℃ほど下げられる効果が期待できます。
送風機を設置する際は、牛の胸部や、横になったときに風が当たる高さに合わせることが重要です。顔だけに風が当たっても効果は限られるため、体全体に風が届くように角度を調整します。
大型送風機の設置には、肥育牛で1頭あたり2万円ほどの費用がかかりますが、牛房内の除湿やアンモニアガスの排除にも役立ちます。ただし、鶏では送風機の周囲に集まって圧死する事故があるため、設置場所には注意が必要です。
あわせて取り組みたいのが、サシバエなどの衛生害虫対策です。サシバエに刺されると牛は痛みを感じ、それを避けるために身を寄せ合って一か所に密集してしまいます。
家畜が密集すると風通しが悪くなり、送風機や換気による暑熱対策の効果が十分に発揮されなくなってしまいます。
こまめな除ふんや清掃、薬剤による駆除を行い、衛生害虫を駆除することで、牛が密集するのを防ぎ、暑熱対策の効果を最大限に引き出すことができます。
ミスト冷房を導入する
細かい霧を噴射し、気化熱によって畜舎内の温度を下げるシステムです。クールペスコンなどのミスト冷房装置を導入することで、家畜を濡らさずに周囲の温度を下げられます。
ミストは水滴が細かいため、家畜の体を濡らさずに冷却効果を得られる点が特長です。ただし、湿度が上がりすぎないよう、換気と組み合わせて運用することが重要です。
家畜の身体に散水する
ソーカーシステムと呼ばれる散水装置を使い、牛の体に直接水をかけて冷却する方法です。濡れた牛体に風を当てることで、気化熱によって体温を効率よく下げられます。
散水するときは、心臓から遠い部位である蹄や肢から順に濡らしていくことが大切です。いきなり背中に冷たい水をかけると、家畜が驚き、ストレスにつながることがあります。
近年は、飼槽に設置したノズルから定期的に水を噴射し、採食中の牛を冷やす方法も増えています。
飼養管理での対策
設備だけでなく、日々の飼養管理を工夫することでも、家畜の暑熱ストレスは軽減できます。
飼育密度を下げる
家畜が密集していると、互いの体温で周囲の温度が上がり、風通しも悪くなります。飼育密度を下げることで、1頭あたりの空間が広がり、暑熱ストレスの軽減につながります。
夏場だけ飼育頭数を調整することで、家畜が過ごしやすい環境を整えられます。
飲み水と飼料を十分に確保する
暑熱期には、家畜の飲水量が大きく増えます。そのため、水槽をこまめに清掃し、新鮮で冷たい水を十分に自由飲水できる状態にしておくことが重要です。
また、暑さによって飼料の摂取量が減るため、消化しやすい良質な粗飼料を与えることで、ルーメン内で生じる発酵熱を抑えやすくなります。あわせて、高カロリーのサプリメントを活用し、エネルギー摂取量を維持する方法も効果的です。
飼槽に残飼が残っていると、高温多湿の環境で傷みやすくなります。飼槽は常に清潔に保ち、朝夕の涼しい時間帯に給餌することで、採食量の維持につなげます。
畜舎の暑熱対策に利用できる補助金
暑熱対策の設備導入には初期費用がかかりますが、国や自治体の補助金制度を活用することで、導入時の負担を抑えやすくなります。
代表的な補助金には「畜産業振興事業」や「酪農経営支援総合対策事業」などがあります。送風機やミスト装置、遮熱シートといった設備の導入に対し、補助率1/2程度の支援を受けられる場合があります。
ただし、補助金には公募期間があり、内容も年度ごとに見直されます。最新情報は、農林水産省のホームページや、地域の農業協同組合、自治体の窓口などでこまめに確認しましょう。
出典:農林水産省「畜産農家・関係団体に対する支援」
(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/l_zigyo/index.html)
出典:独立行政法人農畜産業振興機構「補助事業に係る事業実施主体候補者の公募について」
(https://www.alic.go.jp/topics/support.html)
まとめ
畜舎の暑熱対策は、家畜の健康と生産性を守り、作業員の安全を確保するうえで欠かせません。屋根への遮熱塗料や遮熱シートの施工、換気設備の強化、送風機やミストの導入などを組み合わせることで、効果的な対策につながります。
暑熱対策は、家畜への配慮であると同時に、経営を支える重要な施策でもあります。快適な環境を整えることは、生産性の向上につながり、安定した経営基盤づくりにも役立ちます。
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株式会社湧蒼塗装研究所では、畜産現場での遮熱塗装に関する相談を受け付けております。お困りの際にはぜひお問い合わせください。