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暑さに弱い動物とは?主要な家畜の暑熱限界と現場の暑さ対策

夏になると、動物たちは人間以上に暑さの影響を受けます。とくに日本の夏は暑さだけでなく、湿度も高いのが特徴です。サバンナに生息する動物や、暑さに強いといわれる家畜でも、体調を崩したり命に関わる事態に至ったりすることが少なくありません。

この記事では、動物が耐えられる暑さの限界に関する基礎知識から、牛・豚・鶏といった家畜ごとの弱点、そして飼育現場ですぐに取り入れられる具体的な対策まで、幅広く解説します。

暑さに弱い動物とは?「暑熱限界値」の基礎知識

近年は猛暑日が増え、動物たちを取り巻く環境は年々厳しくなっています。日本の夏は気温の高さに加えて、湿度も高いのが特徴です。体温を下げる仕組みが人間と異なる動物にとって、この環境は想像以上に過酷です。

令和8年の夏には、東京都の多摩動物公園で飼育されていたライオン3頭が、暑さによるとみられる体調不良で死亡したことが報道されました。

サバンナに生息するライオンは、暑さに強いと思われがちです。しかし、日本特有の高温多湿には弱いといわれます。ライオンは呼吸によって気道の水分を蒸発させ、体温を下げますが、湿度が高い環境では水分が蒸発しにくくなるため、体温が十分に下がらないからです。

動物が耐えられる限界「TNZ」と「UCT」とは

動物にはそれぞれ、無理なく過ごせる温度の範囲があります。これは温熱中立帯(Thermoneutral Zone, TNZ)と呼ばれます。人間でいえば、冷暖房をつけなくても快適に過ごせる室温のようなものです。

温熱中立帯の上限を超えると、体は熱を逃がしきれなくなり、体温調節のために大きな負担がかかります。この上限温度が、暑熱限界値(Upper Critical Temperature, UCT)です。暑熱限界値を超えた状態が続くと、食欲の低下や呼吸数の増加が起こり、さらに悪化すると熱中症のような症状に至ることもあります。

暑いと感じたとき、私たちは上着を脱いだり、涼しい場所へ移動したりできますが、動物、とくに飼育下の動物は、自分の判断で快適な環境へ十分に移動できません。だからこそ、飼育する側が暑熱限界値を理解し、先回りして環境を整えることが重要になります。

身近な小動物や野外動物に見られる暑熱限界

ウサギやフェレットといった小動物も、暑さには弱い部類に入ります。とくにウサギは汗腺がほとんどなく、体温調節が苦手なため、気温や湿度が上がる時期には注意が必要です。

動物園で飼育されている動物たちも例外ではありません。国内の動物園でも、猛暑の時期に大型動物が食欲不振や体調不良を起こす事例が報告されています。

ある程度は日陰を選んだり、動き回ったりできる動物園の環境でもこうした状態になるとすれば、畜舎から出られない牛・豚・鶏は、さらに厳しい暑さの影響を受けやすいと考えられます。

主要な家畜(牛・豚・鶏)の暑熱限界値

日本の夏は、牛・豚・鶏といった家畜にとって、暑熱限界値を超えやすい危険な環境です。それぞれの動物には異なる生理的な特徴があり、暑さへの弱さの現れ方も異なります。

日本の夏場は家畜にとって常に限界を超える「危険環境」

農林水産省の調査によると、令和3年7~9月における暑熱による死亡・廃用の頭羽数は、豚は1,092頭、採卵鶏は15万5,000羽、肉用鶏は15万1,000羽でした。さらに、家畜共済のデータを集計した農林水産省の資料によると、令和7年7~10月には、暑熱による乳牛の死亡・廃用事故が844頭、肉用牛が356頭発生しています。

送風機の導入といった対策が広がったこともあり、前年に比べて減少傾向が見られましたが、依然としてこれほど多くの家畜が暑さの影響を受けているのが実情です。送風だけに頼らず、畜舎そのものの温度上昇を抑える根本的な環境改善もあわせて検討する余地があるといえるでしょう。

出典:農林水産省「暑熱被害調査 令和3年7-9月の概要」(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/l_tiku_manage/attach/pdf/index-124.pdf

出典:農林水産省「暑熱被害の傾向について(令和元年~令和7年度)」(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/l_tiku_manage/attach/pdf/index-204.pdf

牛(肉用牛・乳牛)

牛は汗腺を持つため発汗による体温調節が可能です。しかし、飼料を胃の中で発酵させる際に熱が生じるため、もともと暑さの影響を受けやすい体の仕組みになっています。乳牛の適温は4~20℃とされ、21℃を超えると乳量が減り始め、27℃を超えると乳量が大きく落ち込むといわれています。暑熱限界値は、乳牛で25~27℃、肉用牛で30℃が目安です。

気温が上がると、牛は横になることを嫌がり、立ったまま過ごす時間が増えるため、足腰への負担が大きくなります。呼吸数が増える、食欲が落ちるといったサインが見られたら、暑熱ストレスがすでに始まっていると受け止めましょう。

豚は皮下脂肪が厚いうえに汗腺が退化しているため、発汗による体温調節がほとんどできません。体表の血管を広げて熱を逃がしていますが、それだけでは限界があります。適温はおよそ5~20℃で、暑熱限界値は成豚で27℃、子豚で30℃が目安です。

暑熱ストレスを受けると、呼吸数は通常の1分間に30回程度から60回程度まで増加します。消化管への血流も減ってしまうため、飼料の消化吸収がうまく進みません。繁殖への影響も見逃せず、母豚の分娩成績が悪化しやすくなることが研究でも指摘されています。

鶏(ブロイラー・レイヤー)

鶏は体が羽毛で覆われ、汗腺も持たないため、暑さへの耐性がとくに低い家畜です。体温は41~42℃と高く、暑熱限界値は採卵鶏で30~32℃、肉用鶏で28℃が目安です。

犬が舌を出して呼吸するように、鶏も呼吸によって熱を逃がそうとするため、温度が上がると、パンティングと呼ばれる速い呼吸を始めます。放熱が追いつかなくなると、死に至る危険性が高まります。

暑さで卵質や産卵率が低下することも知られており、小玉卵が増えるといった形で影響が現れることもあります。鶏舎では動けるスペースが少ないため、他の家畜以上に環境面での配慮が欠かせません。

家畜が暑熱ストレスを受けると生じる経営リスク

暑熱ストレスの影響は、動物の健康面だけにとどまりません。生産性の低下という形で、飼育現場の収益にも直接関わってきます。

出荷遅れや乳量・卵質の低下による売上ダウン

暑さで食欲が落ちると、牛や豚、鶏はいずれも成長のペースが鈍り、出荷までの期間が延びやすくなります。乳牛は乳量が減り、鶏は卵質が低下するなど、目に見える形で売上に影響が出てきます。

夏場に落ち込んだ生産量は、気温が下がったからといってすぐに回復するとは限りません。暑熱ストレスは、飼料摂取量や乳量、発育、繁殖などに影響を及ぼし、その影響が暑さのピークを過ぎた後まで続く場合があります。

受胎率低下や繁殖障害による将来の生産計画崩壊

暑さは、牛や豚をはじめとする家畜の繁殖成績にも影響します。養豚場のデータをもとに分析した結果、温湿度指数が上昇するほど、農場の経営上の損失リスクが高まることが示されています。

温湿度指数とは、気温と湿度をもとに、家畜がどの程度暑さの影響を受けているかを示す指標です。数値が高いほど、暑熱ストレスが大きいことを示します。温湿度指数が60の場合の月間損失額が23万5,000円となり、温湿度指数が80になると約172万円の損失になるというシミュレーション結果が報告されています。

繁殖成績の悪化は、今年の暑さが、翌年、翌々年の生産計画にまで影響することを意味します。目先の対策だけでなく、中長期的な視点での備えが重要です。

出典:北海学園大学 豊平キャンパス「養豚農場における温湿度指数の影響分析と経営損失リスクの定量的評価」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasmin/202510/0/202510_186/_pdf/-char/ja

冷却設備の連続稼働による電気代の高騰

気温の高い日が続くと、送風機やミスト装置を稼働させる時間はどうしても長くなり、電気代の負担も大きくなります。夏場だけとはいえ、稼働時間が長くなるほど積み重なるコストは無視できません。

冷やし続けるためのコストが積み重なる一方で、そもそも畜舎内に熱を入れない工夫ができれば、稼働時間そのものを抑えられる可能性があります。冷却にかかる費用と、熱の侵入を防ぐ対策にかかる費用を、あわせて見比べてみることが大切です。

畜産現場で今すぐ実践できる暑さ対策

暑熱対策には複数の方法があり、それぞれに得意な場面と限界があります。ひとつの方法に頼らず、組み合わせて実践することが、効果を高めるポイントです。

こちらの記事では、畜舎でできる暑熱対策について解説しています。具体的な暑熱対策10選や導入時に活用できる補助金も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

直射日光を遮る「日除け・日差し対策」

寒冷紗や遮光ネット、グリーンカーテンなどを使い、畜舎の窓や側面から差し込む直射日光を遮る方法です。日射を防ぐだけでも、畜舎内の体感温度は大きく変わります。設置も比較的手軽で、取り組みやすい対策のひとつです。

屋根からの輻射熱を断つ「屋根塗装」

畜舎の屋根は日射を直接受けるため、表面温度が大きく上昇します。この熱は輻射熱(放射熱)として畜舎内に伝わり、室温をさらに押し上げてしまいます。そこで有効なのが、一般的な屋根塗装ではなく、太陽光を反射して屋根そのものの温度上昇を抑え、輻射熱をカットする遮熱塗装です。

屋根の遮熱対策のひとつに、ドロマイト石灰を塗る方法があります。屋根の暑熱対策を検証した熊本県の資料によれば、ドロマイト石灰を塗った部分と塗らない部分とでは、サーモカメラで撮影した際の表面温度に明確な差が現れており、その差はおよそ10℃に達するとされています。屋根の表面温度がこれだけ下がれば、畜舎内に伝わる輻射熱も減り、室温の上昇を抑える効果が期待できるということです。

屋根そのものを日除けのように機能させるという発想は、送風や散水とは異なり、天候や稼働状況に左右されにくく、長期的な効果を見込める点が特徴です。屋根の遮熱化とメンテナンスをあわせて行うことで、暑熱対策と設備の維持管理を同時に進められます。

出典:熊本県農業情報サイト「AGRIくまもと」畜産経営における暑熱対策について(https://agri-kumamoto.jp/cultivation/data/畜産経営における暑熱対策について/

風を巡らせて体感温度を下げる「換気・送風機」

乳牛の場合、風速が1m/秒増すごとに、体感温度はおよそ6℃下がるといわれています。送風機により風を巡らせ、体感温度を下げる方法は、導入時のコストが比較的低く、取り入れやすい対策です。

ただし、送風は気温そのものを下げているわけではなく、湿度が高い日には効果が薄れる場合もあります。ほかの対策と組み合わせることが望ましいでしょう。

気化熱を利用した「ミスト・散水冷却」

細かい霧状の水を噴霧するミスト装置は、水が蒸発するときに周囲の熱を奪う気化熱の作用を利用した方法です。家畜を濡らさず冷却できる一方、湿度が上がりすぎると気化が進まず、かえって畜舎内が蒸し暑くなることもあります。

散水冷却は、牛の体に直接水をかけ、送風と組み合わせて効率よく体温を下げる方法です。高い冷却効果が期待できる一方、水温や水のかけ方によってはかえってストレスを与えることもあるため、水温や散水方法への配慮が求められます。

夏バテを防ぐ「飼料・給水管理の工夫」

気温が高い時間帯は食欲が落ちやすくなるため、涼しい早朝や夜間に給餌の回数を増やすといった工夫が効果的です。飲み水も、冷たく新鮮な状態を保てるよう、水槽の清掃やこまめな入れ替えを行いましょう。ビタミンやミネラルを補うことで、暑さによる体力の消耗を内側からケアすることも大切です。

体熱を逃がす「個体手入れと環境改善」

牛であれば毛刈りによって放熱を助けることもできます。全身ではなく肩のあたりを刈るだけでも一定の効果があるといわれています。

あわせて、畜舎内の除糞をこまめに行うことも重要です。糞尿がたまると空気中の水分が増えるだけでなく、発酵熱が温度上昇の原因にもなります。清潔な環境を保つことが、暑さ対策の土台になります。

まとめ

暑さに弱い動物は、身近な小動物から牛・豚・鶏まで幅広く存在します。

家畜の場合、暑熱ストレスは生産量の低下や繁殖成績の悪化という形で、収益にも大きく影響を及ぼします。日除けや送風、飼料管理などを組み合わせながら、屋根からの輻射熱を抑える対策も選択肢に加えることで、暑さに左右されにくい環境を長期的に維持しやすくなるでしょう。

また、畜舎の暑さ対策は、家畜だけでなく現場で働くスタッフの安全を守るうえでも重要です。畜舎内の温度を下げることで熱中症のリスクを抑え、スタッフにとって安全で働きやすい環境を整えることにもつながります。こうした職場環境の改善は、スタッフの身体的な負担を軽減し、離職防止や人材の定着にもつながるでしょう。

湧蒼塗装研究所では、輻射熱をカットする遮熱塗装によって、畜舎・鶏舎の温度上昇を根本的に抑えるご提案を行っております。稼働のたびにコストがかかる送風やミストと異なり、一度の施工で長く効果を発揮できる点が強みです。屋根の暑さ対策にご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

湧蒼塗装研究所では、畜産現場での遮熱塗装に関する相談を受け付けております。お困りの際にはぜひお問い合わせください。

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