今日からできる豚の暑さ対策10選!暑熱ストレスから大切な家畜を守るには

気温が上がる時期を迎え、豚舎内の温度上昇や豚の食欲低下に悩んでいないでしょうか。気温の上昇とともに豚が餌を残すようになり、増体の鈍りを感じている経営者の方も多いはずです。
豚は汗による体温調節が苦手なため、暑さの影響を受けやすい家畜です。対策を先送りにすると、豚の健康を損なうだけでなく、生産性が落ちて経営上の損失につながるおそれがあります。
本記事では、豚舎でできる暑さ対策を10個に厳選し、それぞれのコストや効果の続く期間を比較しながらご紹介します。自社の設備や予算に合った方法を見つける手がかりにしてください。
夏の暑さが豚舎に与える影響
暑さが豚に与える影響は、単なる夏バテでは済みません。放置すると、豚の健康状態が悪くなるだけでなく、増体や繁殖などの生産成績にも影響が及びます。
また、高温多湿になりやすい豚舎で働く従業員にも、熱中症への注意が必要です。まずは、暑さが豚と人に与える影響を見ていきましょう。
豚が暑熱ストレスを受ける
豚は皮下脂肪が厚いうえ、汗腺による発汗機能が十分に発達していないため、暑い環境では呼吸数を増やして熱を逃がそうとします。しかし気温や湿度が高くなると体温調節が追いつかず、暑熱ストレスを受けやすくなります。
暑熱ストレスの影響は、まず食欲の低下として現れ、増体のスピードが鈍る原因になります。繁殖豚では受胎率の低下や分娩成績への影響、授乳中の母豚では飼料摂取量や泌乳量の低下が起こることもあり、肥育豚でも出荷体重や枝肉成績に影響するおそれがあります。
つまり、暑熱ストレスは「夏場によくある一時的な不調」ではなく、生産効率と収益性を少しずつ押し下げる経営上のリスクです。「暑いから仕方がない」とやり過ごさず、早めに対策を始めることが大切です。
さらに、豚の暑熱ストレスは気温だけでなく、湿度の影響も大きく受けます。暑熱環境を把握する指標のひとつに、気温と湿度を組み合わせたTHI(温湿度指数)があります。
神奈川県畜産技術センターの調査では、THIが74以上の環境で、授乳期母豚の体温や呼吸回数の増加、残餌回数の増加などが確認されました。このことから、THI74は、授乳期母豚の暑熱ストレスを判断する目安のひとつとされています。
たとえば、気温25℃・湿度75%の環境を同調査で使われた計算式に当てはめると、THI換算では約74.4です。人にとっては極端な暑さに感じられない場合でも、湿度が高ければ、豚が暑熱ストレスを受け始める水準に達する可能性があります。
ただし、THIの計算式や区分は、研究や豚の成長段階によって異なります。数値だけで判断せず、呼吸数の増加や飼料摂取量の低下、横になって過ごす時間の増加など、豚の様子とあわせて確認しましょう。
出典:神奈川県畜産技術センター「暑熱ストレスを受けた授乳期母豚では呼吸回数が増加し、子豚の育成率および子豚の離乳時体重が低下する」(https://www.pref.kanagawa.jp/documents/106525/5162tikugi13.pdf)
従業員の熱中症リスクが上昇する
豚舎内の温度上昇は、豚だけでなく、作業にあたる従業員にとっても深刻な問題です。屋根や壁から伝わる熱がこもり、換気が不十分な場合には湿度も高くなるため、屋外と同じように厳しい暑さになる可能性があります。
日本気象協会が若手農業従事者90人を対象に行った調査では、農作業中または農作業後に本人が熱中症にかかったことがある、もしくは周囲にかかった人がいると回答した割合は約6割でした。
調査人数が限られているため、すべての農業従事者の状況を表すものではありませんが、農作業中の熱中症が身近なリスクであることがわかります。
従業員が体調を崩せば、日々の飼養管理に支障が出るだけでなく、人材の確保や定着にも影響しかねません。豚のためだけでなく、従業員が安全に働ける環境を整えるという視点からも、暑さ対策は欠かせません。
休憩時間を確保する、暑い時間帯の作業を減らす、こまめに水分と塩分を補給するなど、人への対策もあわせて進めましょう。
出典:一般社団法人 日本気象協会「農作業と熱中症に関する実態調査を公開」(https://www.netsuzero.jp/news/20250609-14547.html)
豚舎は暑くなりやすい構造|折板屋根と輻射熱の関係
豚舎では、金属製の折板屋根が使われていることがあります。折板屋根は広い面積に使いやすく、丈夫で施工しやすい点がメリットです。その一方で、日差しを受けると表面温度が上がりやすいという特徴があります。
屋根の色や材質、断熱の状態によっては、夏の晴れた日に表面温度が60℃〜70℃ほどになることもあります。
問題は、高温になった屋根から、輻射熱と呼ばれる熱が豚舎内へ伝わることです。輻射熱とは、熱くなった屋根から、豚や人、床、設備などへ直接伝わる熱を指します。
そのため、換気扇や扇風機で空気を動かしても、屋根から伝わる熱を十分に防げないことも少なくありません。
また、断熱材が設置されていない場合や、断熱性能が低い場合は、日差しで温められた屋根の熱が舎内へ伝わりやすくなります。
ただし、豚舎が暑くなる原因は屋根だけではありません。壁に当たる日差しや換気不足、豚の数、豚自身が出す熱なども舎内環境に影響します。
屋根への遮熱・断熱対策を中心に、換気や送風などを組み合わせることが大切です。次の章では、屋根への対策を含め、豚舎でできる暑さ対策を具体的に紹介します。
豚舎でできる夏の暑さ対策10選

ここからは、豚舎で実践できる暑さ対策を10個紹介します。予算や緊急度によって選べる方法が異なるため、建物への対策と豚自身への対策に分けて整理しました。
対策を選ぶときは、最初にかかる費用だけでなく、効果の続く期間や日々の作業量も比べることが大切です。自社の設備や予算に合った方法を検討してみてください。
建物への対策
外から入ってくる熱を防ぐことは、暑さ対策の土台になります。ドロマイト石灰や遮熱塗料、遮熱シートなど、屋根や壁に施す方法にはいくつかの選択肢があり、費用や効果の持続期間はそれぞれ異なります。
初期費用だけでなく、効果の続く維持管理の手間まで含めて比較することが、後悔しない選択につながります。ここからは、それぞれの対策について特徴と注意点を見ていきましょう。
屋根にドロマイト石灰を塗布する
ドロマイト石灰を水に溶いて屋根に塗布し、表面を白くすることで太陽光を反射させる方法です。低コストで取り組みやすく、屋根の温度上昇を抑える効果が期待できます。
庄内家畜保健衛生所の資料では、ドロマイト石灰を塗った屋根の屋根裏温度が、塗っていない屋根より約5℃低くなった事例が紹介されています。
ただし、効果は天候や屋根の材質、塗り方などによって変わります。また、雨や風で少しずつ落ちていくため、屋根の状態を確認し、必要に応じて塗り直さなければなりません。
低コストで始めやすい一方、効果を保つには継続的な作業が必要になる点を理解しておきましょう。
出典:庄内家畜保健衛生所「家畜衛生だより 暑熱対策について(豚編)」(https://www.pref.yamagata.jp/documents/45843/2025eiseidayorino11-2.pdf)
屋根や壁に遮熱塗料を塗布する
屋根や壁に遮熱塗料を塗布する方法は、太陽光に含まれる近赤外線を反射し、屋根や壁の表面温度が上がるのを抑えます。熱が豚舎内へ伝わる前に抑えられるため、暑さの原因そのものを減らす対策です。
石灰塗布や散水のように毎年手を加える必要がなく、製品や施工環境によっては10年以上の耐用年数が期待できる点も特徴です。
また、汚れがつきにくい低汚染性の塗料を選べば、雨によって汚れが流れやすくなり、反射性能の低下を抑えられます。
初期費用はかかりますが、毎年の作業やランニングコストが積み重なることを考えると、長い目では費用と手間を抑えられる可能性があります。
ただし、耐用年数は保証期間ではありません。屋根の状態や日当たり、周辺環境、施工方法などによって変わります。条件によっては補助制度を利用できる場合もありますが、対象となる工事や設備は年度や地域によって異なるため、自治体や関係機関に確認しましょう。
塗鈑瓦屋では、屋根・壁面の遮熱塗装を専門に手がけており、豚舎のような畜舎への施工にも対応しています。屋根の状態や豚舎の構造に応じた診断・提案を行っていますので、根本的な暑さ対策を検討する際は、お気軽にご相談ください。
屋根に遮熱シートを貼る
アルミ箔などを使った遮熱シートを屋根の内側や壁に貼り、輻射熱を反射させる方法です。塗装が難しい素材の屋根でも施工できる場合があり、塗装以外の選択肢として活用されています。
遮熱シートには、屋根の内側に取り付けるものや、屋根の外側に施工するものがあります。適した取り付け方は、屋根の形や製品によって異なるため、事前に確認しましょう。
また、遮熱シートは主に輻射熱を反射するもので、熱を通しにくくする断熱材とは役割が異なります。断熱材と組み合わせれば、それぞれの働きによって熱の侵入を抑えやすくなります。
今ある屋根を活かしながら性能を高めたい場合の選択肢として、検討するとよいでしょう。
カバー工法で断熱性・遮熱性を高める
今ある屋根の上に新しい屋根材を重ねて施工する方法が、カバー工法です。老朽化した屋根の補修と暑さ対策を同時に行える方法といえます。
初期費用はほかの対策より高くなりやすいものの、断熱材を入れたり、遮熱性のある屋根材を使ったりすることで、舎内へ伝わる熱を抑えられます。
屋根の寿命を延ばしながら、今後のメンテナンス回数を減らせる可能性もあるため、屋根の劣化が気になっている場合は、あわせて検討するとよいでしょう。
また、今ある屋根をすべて撤去せずに施工できるため、撤去をともなう工事より工期を短くできる場合があります。ただし、豚舎を使いながら工事を進められるかどうかは、屋根の状態や工事内容によって異なります。
屋上散水を行う
屋根に水をかけ、水が蒸発するときに熱を奪う仕組みを利用して、表面温度を下げる方法です。井戸水が使える環境であれば、比較的低コストで始めやすく、暑い日にすぐ実施できます。
ただし、水道水を使う場合は水道代がかかるほか、散水設備の設置や点検も必要です。また、屋根材や塗装の状態によっては、継続的な散水によってさびや劣化が進む可能性があります。
排水がうまくできないと、水たまりや雨漏りの原因になることもあります。屋根の材質や傷み具合、排水経路を確認したうえで導入を判断してください。
豚舎側面への日差しを遮る
豚舎の側面に直射日光が当たると、壁からも熱が伝わりやすくなります。つる性植物を使ったグリーンカーテンや寒冷紗、遮光ネットの設置は、比較的低コストで取り組めるDIY的な対策です。
とくに、午後の強い西日が当たる面は温度が上がりやすいため、日差しの強い場所から優先的に対策しましょう。
設置する際は、日光を遮りながらも、風の通り道をふさがないように配置を工夫することが大切です。換気口や窓を覆ってしまうと、かえって舎内に熱や湿気がこもるおそれがあります。
グリーンカーテンは育つまでに時間がかかるため、暑さが本格化する前の春先から準備を始めておくと安心です。
換気扇や扇風機を導入する
換気扇は、豚舎内にたまった熱や湿気を外へ出す役割があります。扇風機や送風機は、豚の周りに風を送り、体から熱を逃がしやすくするための設備です。
ただし、換気扇や扇風機は、空気そのものを冷やす設備ではありません。屋根対策によって外から入る熱を抑えたうえで使うと、より効率よく舎内の暑さをやわらげられます。
設置する際は、豚が過ごす床面の高さまで風が届くよう、角度や位置を調整することがポイントです。舎内全体の空気を動かす大型ファンと、必要な場所に風を送る扇風機を組み合わせる方法もあります。
ただし、哺乳豚や離乳直後の子豚に強い風を直接当てると、体が冷えすぎるおそれがあります。豚の成長段階に合わせて、風向きや強さを調整しましょう。
ミスト冷房を導入する
細かな霧状の水を噴霧し、水が蒸発するときに熱を奪う仕組みを利用して、豚舎内の温度を下げる方法です。送風機と組み合わせることで、冷やされた空気を舎内へ広げやすくなります。
ただし、湿度が高い日は水が蒸発しにくく、十分な冷却効果を得られない場合があります。また、噴霧する水の量が多すぎると、床や豚の体がぬれたり、舎内の湿度が上がりすぎたりするため注意が必要です。
設置する際は、細かな霧が豚舎内に広がり、水滴が床まで落ちにくいように、ノズルの位置や噴霧量を調整します。豚舎の広さや換気量によって適した設置方法が異なるため、導入時は専門業者に相談すると安心です。
豚への対策
建物への対策とあわせて、豚自身の飼養管理を見直すことも欠かせません。とくに水分補給と飼料の与え方は、暑熱ストレスによる影響を抑えるうえで重要です。
建物と豚の両方の側面から対策を進めることで、より高い効果が期待できます。
十分な量の新鮮な水を用意する
暑さで飼料を食べる量が減った場合でも、水分は最優先で確保する必要があります。とくに授乳中の母豚は、多くの水を必要とします。
庄内家畜保健衛生所の資料では、授乳中の母豚は通常、1日あたり20リットル程度の水を飲み、夏場にはその2〜3倍以上の飲水量が必要とされています。つまり、暑い時期には1日40〜60リットル以上を飲む場合があります。
ただし、必要な量は気温や飼料、泌乳量などによって変わります。水が出ているかを見るだけでなく、十分な勢いで出ているかも確認しましょう。
同資料では、分娩舎の給水器に必要な流量の目安として、1分あたり2リットルが示されています。給水設備が詰まっていたり、水圧が下がっていたりすると、豚が必要な量を飲めません。
暑い時期は給水器の流量を測り、汚れや詰まりがないか、こまめに確認しましょう。
出典:庄内家畜保健衛生所「家畜衛生だより 暑熱対策について(豚編)」(https://www.pref.yamagata.jp/documents/45843/2025eiseidayorino11-2.pdf)
栄養の豊富な飼料を与える
暑さで食欲が落ちているときに大切なのは、単純に飼料の量を増やすことではありません。少ない摂取量でも、必要な栄養を補えるように工夫することが重要です。
気温が高くなる日中を避け、比較的涼しい早朝や夕方に給餌すると、飼料を食べる量の低下を抑えやすくなります。一度に多く与えるのではなく、給餌の回数を増やす方法もあります。
また、飼料の消化によって発生する熱を抑えるため、消化しやすい飼料に見直したり、必要に応じてエネルギー量や粗タンパク質、粗繊維などを調整したりする方法もあります。
ただし、必要な栄養は豚の成長段階によって異なります。自己判断で配合を大きく変えず、獣医師や飼料メーカー、畜産関係機関などに相談しましょう。
高温多湿の時期は飼料が傷みやすいため、食べ残しを長時間放置せず、においや変色、カビがないか確認することも大切です。
出典:庄内家畜保健衛生所「家畜衛生だより 暑熱対策について(豚編)」(https://www.pref.yamagata.jp/documents/45843/2025eiseidayorino11-2.pdf)
まとめ
豚舎の暑さ対策は、一時的な方法と、長く効果が続く方法を組み合わせることが重要です。
遮光ネットや換気扇、ミスト冷房なども有効ですが、ひとつの方法だけですべての暑さを解決できるとは限りません。屋根や壁から入る熱を抑え、舎内にたまった熱を外へ出しながら、水や飼料の管理も見直すことで、より高い効果が期待できます。
なかでも屋根や壁への遮熱塗装は、製品や施工環境によっては10年以上の耐用年数が期待でき、毎年の作業を減らしやすい選択肢です。初期費用だけでなく、今後必要になる作業や維持費まで含めて検討しましょう。
塗鈑瓦屋は、畜舎や飼料タンクの遮熱施工を専門に手がけ、これまでに1,000棟以上の施工実績を積み重ねてきました。独自のハイブリッド工法により、屋根を張り替えずに補修と遮熱を同時に進められるため、工事費や畜舎への負担、日々の飼養管理への影響を抑えやすい点が特徴です。
豚と従業員が過ごしやすい環境を整えるためにも、豚舎の暑さや屋根の劣化にお困りの際は、まずは塗鈑瓦屋へご相談ください。